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マスクフィットテストの解説及びMT-11D/-05U型のご紹介

2023年08月01日
産業分野のマスクフィットテスト
 
呼吸用保護具のフィットテストを
“1年以内ごとに1回”実施することが義務化

金属アーク溶接等
作業中に発生する「溶接ヒューム」について、労働者に神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになったことから、「継続」して行う「屋内作業場」の労働者は、呼吸用保護具を適切に装着できていることを確認するフィットテストを1年以内に1回実施することが義務化されました。(令和5年4月1日より)
また、作業環境測定結果が第3管理区分となった場所の規制が強化され、マスク着用の義務化に併せて、マスクフィットテストも令和6年4月1日より義務化となります。
今後は、金属アーク溶接等作業者以外にもフィットテストが必要となる作業者が出てまいります。
※ただし、屋外作業の場合はマスクフィットテストは義務付けられていません。

マスクフィットテストとは?

マスクが顔に隙間なく密着しているかどうかを確認する試験のことを指します。
フィルター性能が高くても、マスクが顔にフィットしていなければ本来の性能が発揮されないため、フィットテストにてマスクと顔の密着具合を確認します。
また、試験は日本産業規格(JIS)T8150:2021による方法、またはこれと同等の方法により実施し、測定機器・器具を用いてマスクの密着性を確認しながら、被験者に複数の指定動作を行わせ、マスクの密着性を総合的に確認します。
また、フィットテストには「定量的フィットテスト」と「定性的フィットテスト」の2種類の試験方法があります。

2種類のフィットテストの方法(プロトコル)

 

なお、定量的フィットテストには“標準法”と“短縮法”という2種類のプロトコルがあり、定量的フィットテストにてフィットテストを実施する場合は、どちらかのプロトコルを選択し実施します。 各プロトコルの詳細は以下の通りです。 ※「短縮法」はフィットテストを行うマスクの種類により、動作が一部異なりますのでご注意ください。

 

 

フィットテストの対象となるマスクは?

顔面で気密を形成する『タイトフィット形』のマスクがフィットテストの対象です。
(※『ルーズフィット形』のマスクはフィットテストの対象外)

対象マスクの例

  • 取替え式防じんマスク
  • 使い捨て式防じんマスク
  • 防毒マスク
  • 面体形電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)
  • 面体形有毒ガス用電動ファン付き呼吸用保護具(G-PAPR)
  • 面体を有するホースマスク(肺力吸引形、手動送風機形、電動送風機形)
  • 面体を有するエアラインマスク(一定流量形、デマンド形、プレッシャデマンド形)
  • 空気呼吸器(デマンド型、プレッシャデマンド型)
  • 循環式呼吸器(酸素発生形、圧縮酸素形)

 

厚生労働省 パンフレット“金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ”
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00001.html

※フィットテスト時の注意点
・防毒マスク、G-PAPRは、フィットテストの時だけ吸収缶を防じんフィルターに付け替えるか、防じん機能付きの吸収缶を使用する必要があります。
・PAPR、G-PAPRは、フィットテスト中は電動ファンをOFFにする必要があります。
・ホースマスク、エアラインマスク、空気呼吸器、循環式呼吸器は、基本的にはマスクメーカーが案内する模擬面体を使用して測定を行います。

 

フィットテストの評価方法や評価基準は?

フィットテストの評価には『フィットファクタ(FF)』という数値が用いられます。
フィットファクタは“マスク外側の粉じん”“マスク内側の粉じん”の比率により求まり、フィットファクタが大きいほど、マスクがきちんと顔に密着しており、マスク内への粉じんの漏れ込みが少ないことを表しています。

 

フィットテストの合否判定の基準には、「要求フィットファクタ」という基準値が用いられます。
この要求フィットファクタに対して、フィットテストで計測した「総合的なフィットファクタ」が上回っていれば合格となります。
なお、この要求フィットファクタは面体によって異なり、各面体と要求フィットファクタの関係、および定量的と定性的での実施可否は以下のとおりとなります。


※半面型面体を用いて、定性的フィットテストを行った結果が合格の場合、フィットファクタは100以上とみなします。

 

<サンプリングアダプターについて>
フィルター取替え式のマスクに使用するサンプリングアダプターについては、ご利用のマスクメーカーにご確認をお願いいたします。
日本呼吸用保護具工業会<会員一覧>
https://www.japanmask.jp/member-list.html

フィットテストの実施頻度や実施者は?

フィットテストの実施頻度
「溶接ヒューム」に関しては、フィットテストは「1年以内ごとに1回」とされていますが、以下の場合には、必ずフィットテストを実施しなければなりません。

① 面体を有する呼吸用保護具を選択するとき
② 面体(サイズ、形状、型式、材質又は製造業者)を変更するとき

 

また、着用者に次のような変化があった場合にも、面体の密着性に影響を与えるおそれがあるので、実施頻度に関わらず随時フィットテストを実施する必要があります。

  • 体重の著しい変化
  • 面体が密着する顔の部分の傷跡、手術などによる変化
  • 歯の変化
  • 着用者の不快感

 

<フィットテスト実施者>
「労働安全衛生法令上、フィットテスト実施者の制限はないが、フィットファクタの精度等を確保するため、十分な知識及び経験を有する方が望ましい」とされています。
(例:保護具着用管理責任者や、マスクフィットテスト実施者養成研修などの専門的な研修を受けた方)
★フィットテスト実施者に必要な知識や能力★
  • フィットテストに用いる呼吸用保護具の知識
  • フィットテスト方法の知識
  • フィットテスト機器の準備及びその動作を観察する能力
  • フィットテストを実施する能力
  • フィットテスト不合格の推定要因を見つける能力

 

定量的フィットテストの実施方法

定量的フィットテストは、以下の専用の測定機器を用いて面体内外の粒子を計測し、面体と顔面の密着性を確認します。

マスクフィッティングテスターMT-11D型 労研式マスクフィッティングテスターMT-05U型

 

定量的フィットテストの実施方法の詳細につきましては、わかりやすく“標準法”“短縮法”のプロトコルで実施する動作を、それぞれ動画形式でまとめましたので、以下の動画をご参照ください。
※定量的フィットテストの際、マスクを加工したり、サンプリングアダプターを取り付ける必要があります。

標準法 フィットテストの動作
短縮法 フィットテストの動作
使い捨て式を使用した場合 取替え式を使用した場合